空き家問題は、日本全体で起きている大きな問題の1つです。これは日本の人口が減少して高齢化が進む中で、空き家が増えていることが主な原因です。空き家が増えると、街の雰囲気が悪くなったり、犯罪の温床になったりする可能性があります。また、空き家問題は、個人だけでなく地域全体の問題でもあります。この増え続ける空き家問題を改善するために、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」が、昨年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」に改正されました。この法律が改正されると、空き家を所有している人にどのような影響があるのでしょうか。
今回は、空き家の現状と特定空家に認定される定義をお話したいと思います。
2024年4月30日に総務省が発表した2023年10月時点の住宅・土地統計調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合が過去最高の13.8%に達したことが分かりました。およそ7軒の家のうち1軒が空き家になっているということが分かります。増え続ける空き家ですが、いったい空き家の何が問題なのでしょうか。
空き家とは、国土交通省によると法第2条第1項で「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地 (立木その他の土地に定着するものを含む。) をいう。」と定められています。難しく書かれていますが、概ね1年以上使用されている様子がない家のことです。具体的には、1年間人の出入りがないことのようですが、これはなかなか確認が難しいため、電気やガス・水道が1年間使用されていないと判断されることが多いのです。
しかし、住人がいなくなって1年以上経過していても、定期的に掃除をしているなど家の手入れがされている場合は、空き家とはみなされません。あくまで家を放置しているのか、そうでないのかというところで判断されていると考えられますので、所有者はきちんと空き家の管理するという責任があります。
空き家でも、手入れされずに放置され、ゴミ屋敷のような状態になっている空き家もあります。このような空き家は、安全面や衛生面でも問題を引き起こし、近隣に被害を及ぼす可能性があります。こうした最も問題視される空き家を「特定空家」と呼んでいます。
空き家対策特別措置法第2条第2項では、下記のうち、1つ以上の要件を当てはまると判断された空き家を「特定空家」としています。
◆ 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
◆ 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
◆ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
◆ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家は、近隣に悪影響を与えるかどうかで判断されます。
各自治体で、通報や苦情があった空き家を調査し、空き家の所有者に対して、~してくださいねといったお願い形式の助言から、行政指導、勧告と進み、~しなさいといった命令、最終手段として「行政代執行」となります。勧告の段階まで、何らかの改善がなされていないと特定空家に指定されてしまう上、行政よりさまざまな処置がとられます。しかし、特定空家に指定される原因を解決すれば、特定空家から解除されます。
空き家であっても、所有者には毎年固定資産税が課税されます。
ただし、空き家が建っている土地に関しては、固定資産税が通常の6分の1に減免されるといった特例措置があります。建物があるため、固定資産税が減免されることから、所有者は建物を残しておきたいと考えるのは自然なことです。しかし、空き家が「特定空家」と認定されると、この特例措置は受けられなくなり、固定資産税は最大で通常の6倍にもなります。空き家を所有している場合は、このようなリスクを抱えていることに頭に入れておく必要があります。
特例措置の適用がなくなると、固定資産税額が以下のように大きく変わります。
例)空き家の敷地面積が200㎡以下で課税標準額が【建物】300万円【土地】1200万円の場合
■特例措置が適用されている場合
建物:300万×1.4%(税率)=42,000円
土地:1200万×1/6(住宅用地の特例措置による減額)×1.4%(税率)=28,000円
合計:70,000円
■特例措置が適用されていない場合
建物:300万×1.4%(税率)=42,000円
土地:1200万×1.4%(税率)=168,000円
合計:210,000円
そのため、費用面でかなりの負担を負うことになります。
空き家問題は年々深刻になってきています。さらに2023年の改正により、特定空家に指定される前段階の状態でも「管理不全空家」として勧告を受け、優遇措置の対象外になりました。特定空家にならなければ大丈夫とは思わず、空き家の時点で、しっかり家のケアを行いましょう。また「特定空家」とならないためには、定期的に掃除や修繕などを行う、近隣住民に迷惑をかけるような家の状態にしないなど、空き家を放置しないことが大切です。特に、自治体から改善の指導を受けた時点で、素直に従い、何らかの策を講じておきましょう。
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