- 現場レポート
静寂に包まれる京都の某神社。その境内に佇む参集殿は、地域の方々が集う大切な空間。しかし長年の使用による老朽化が進み、天井や床の傷みが目立ってきていました。今回は、「書庫として区切られていた空間を一間にし、より広く使えるようにしたい」というご依頼のもと、改修工事を行いました。工期は約1か月半。天井や床の仕上げ材を一新し、快適で明るい室内空間へと生まれ変わりました。歴史と現代の機能性が調和した空間づくりの様子を、ぜひご覧ください。
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もともとは収納を兼ねた間仕切りが設けられており、やや閉鎖的な印象の室内でした。長年使われた天井材は部分的に剥がれや汚れが目立ち、床も経年劣化により色ムラやキズが生じていました。
また、書庫としての使い勝手に配慮されていたため、天井高もやや低く、圧迫感のある空間となっていたのです。これらを改善しつつ、神社としての格式や雰囲気を保ちながら、より多目的に利用できるような快適性を加えていくことが、今回の工事のテーマとなりました。
工事に入る前に、まず徹底して行ったのが養生作業です。参集殿は神社の境内にあり、神聖な行事にも使われる大切な場所。そのため、工事中にほこりや傷が広がらないよう、室内の既存床・壁・天井に対して丁寧な保護措置を施しました。特に広範囲にわたる改修のため、ブルーシートや専用の養生パネルを使って施工範囲を完全に区切り、工事エリアと通常使用エリアを明確に分けました。搬入・搬出経路には、クッション性のある養生材を敷き込み、作業員の通行による床材への負担を最小限に抑えています。養生作業は単なる準備ではなく、「お預かりしている大切な空間を汚さず、傷つけずに工事を進める」ための第一歩。施工品質だけでなく、信頼関係を守るためにも欠かせない工程です。養生を万全に整えたことで、この後の解体・改修工事も安心して進めることができました。
今回の改修工事でまず最初に行ったのは、内部の解体作業です。とくに大きなポイントだったのが、もともと「書庫」として使われていた空間を区切っていた間仕切りの撤去。これにより、一間続きの広々とした空間が実現します。解体では、天井材・壁材・床材などを丁寧に撤去していきました。神社の建物ということで、施工時の音や振動にも最大限配慮しながら、周囲の構造を傷つけないよう慎重に作業を進めます。埃が舞わないよう、作業前にしっかりと養生を行い、解体後には構造体の状態をしっかりと確認。柱や梁に腐食や損傷がないかをチェックすることで、次の工程へとスムーズに進める準備が整いました。ただ壊すだけでなく、次に「何を残し」「何を整えるか」を考えながら進めるのが、リフォーム解体の醍醐味です。もともとの建物の良さを大切にしながら、今の暮らしに合わせて空間を磨き直す——そんな第一歩が、この解体作業でした。
天井は、室内の快適性を大きく左右する要素です。今回は、古くなった天井材をすべて撤去したうえで、断熱性能を高めるために新しく断熱材を敷き詰めました。使用したのは、グラスウール系の断熱材。天井裏にしっかりと敷き込むことで、冬の冷気を遮断し、夏の暑さも和らげます。また、断熱材を入れることで室内の温度ムラが軽減され、冷暖房効率も向上。省エネ効果が期待できるだけでなく、結露の防止にもつながります。さらに今回は、断熱材の上から石膏ボードを新しく施工することで、見た目の美しさと安全性の両立も図っています。天井は、ふだんあまり意識されない場所かもしれませんが、仕上がると部屋全体の明るさや雰囲気ががらりと変わります。天井をリニューアルしたことで、空間に高さと広がりが生まれ、より開放的な印象に生まれ変わります。
床は日々の歩行や荷物の移動など、絶えず負荷がかかる部分。今回の改修では、経年劣化によって傷んでいた床の一部を重点的に補修しました。特に目立ったのは、歩いたときにわずかに沈む感覚や、きしみ音の発。これらは下地材の緩みや腐食が原因であることが多いため、床を一度めくり、構造部分をしっかりと点検しました。下地の根太(ねだ)や大引きに問題がある箇所には、新しい補強材を追加で取り付け。傷んだ合板部分は撤去し、新しいものに差し替えていきます。これにより、耐久性と安定感が回復し、長期間安心して使用できる床構造が完成します。「見た目」ではなく「足元の中身」を整えることは、室内空間の質を大きく左右します。表面的にはわかりにくい作業ですが、お施主様の安全と快適さを守るうえで欠かせない、大切な工程のひとつです。
今回の改修では、壁の使い方に合わせて、ベニヤ板(合板)を貼った壁と、石膏ボードを貼った壁の2種類を使い分けました。まず、合板(ベニヤ板)を貼った壁は、強度が求められる部分に採用。木を何層にも重ねた合板は、棚やフックなどを取り付ける際にもビスがしっかり効くため、利便性を重視した壁に適しています。将来的な用途の変化にも対応でき、実用性の高い空間づくりが可能になります。一方で、石膏ボードを貼った壁は、主に仕上げ重視の面に使用されました。石膏ボードは耐火性・遮音性に優れ、クロス仕上げとの相性も抜群。ボード同士の継ぎ目やビス穴は、後のパテ処理を見越して精密に施工しました。このように、目的に応じた素材選びと施工方法を使い分けることで、空間全体の機能性と仕上がりの美しさを両立しています。見えない部分にも“使いやすさ”と“長持ち”を追求した工程です。
石膏ボードを貼り終えたら、次は「パテ処理」と呼ばれる工程に入ります。これは、ボード同士の継ぎ目や、ビスの頭を埋めて、表面を平滑に整える作業。クロスを貼ったときに段差や凹凸が出ないようにするために、とても重要な工程です。パテは、粉と水を混ぜて練ったものをコテで塗り込んでいきます。一度塗って終わりではなく、乾燥を待ってから何度か重ね塗りし、最終的にはサンドペーパーで表面を丁寧に研磨していきます。粉塵が出やすい工程ですが、室内を清潔に保つため、都度掃除を行いながら進めました。この工程を丁寧に行うことで、仕上がりのクロスがピタッと貼れて、見た目にも美しい空間が生まれます。壁や天井が完成したときの“ピンと張ったような美しさ”は、このパテ処理によって生まれているのです。まさに、職人の技術が最も活きる部分のひとつと言えるでしょう。
下地処理が整ったら、いよいよ内装仕上げの大きな山場である「クロス貼り」に入ります。今回採用したのは、落ち着いた色味の壁紙で、神社の厳かな雰囲気にも調和するよう配慮しました。室内の光の反射や自然光との相性も考慮し、ややマットな質感で空間全体がやさしく包まれるような仕上がりです。施工時には、しっかり養生をして、天井から先にクロスを貼っていき、その後に壁へと作業を進めます。特に継ぎ目の処理は丁寧に行い、目立たないようにジョイントカットを活用。角や入り隅・出隅は、クロスを少し重ねて剥がれにくくするなど、細かな工夫を積み重ねています。クロス貼りが完了すると、それまで“工事中”の雰囲気だった室内が一気に「完成形」に近づきます。お施主様からも「思っていたより広く、明るく感じる」とのお声をいただき、空間の印象をガラリと変える力を改めて実感した工程でした。
床材には、商業施設や公共施設でも多く使用されている、サンゲツの「NT-350シリーズ」のタイルカーペットを採用しました。この床材は、耐久性が非常に高く、歩行音を軽減してくれる足元にやさしいタイルカーペットです。そのため、室内での移動が多い場面でも安心して使用でき、見た目にも落ち着いたグレー系の色調が、空間全体を引き締めてくれます。今回は既存の床に直接施工できる特性も活かし、解体作業を最小限に抑えながらリニューアルしました。床全体のレベルを細かく確認しながら、ずれや浮きがないよう中心から外側へと張り進めてタイルを1枚1枚丁寧に配置しました。部分交換することもできるため、メンテナンスがしやすいのも大きなメリットです。落ち着いた色味と高い耐久性を兼ね備えたNT-350シリーズは、参集殿としての使用にぴったりの床材です。
今回の工事では、室内だけでなく屋根にも手を加えました。長年の風雨にさらされていた瓦棒(かわらぼう)の一部に、劣化や浮きが見られたため、必要箇所を丁寧に補修。金属製の屋根材を使用している場合、接合部の浮きやサビが雨漏りの原因になることもあるため、早めの対応が重要です。瓦棒修繕では、既存の板金を再利用しながら、浮きや剥がれがあった箇所には新しい鋼板を追加。水の流れを妨げないように勾配も見直し、雨仕舞いを徹底的に整えました。目立たない部分ですが、この「屋根から守る」という意識が、建物全体の寿命を大きく左右します。神社の建築美を壊すことなく、さりげなく補強しながら、長く安心できる屋根へと再生しました。
完成後の参集殿は、明るく静かで、居心地のよい空間へと生まれ変わりました。かつて書庫として区切られていた空間は、間仕切りを取り払ったことで大きな広がりを感じられるようになり、天井・床・壁すべてが調和した、落ち着きのある内装に仕上がっています。素材や色合いは、神社の品格を大切にしながら、控えめで上品な印象を意識して選びました。今回の改修では、構造の強度にも配慮しつつ、快適性と美しさの両立を重視。
「行事のときだけでなく、普段からも使いたくなる空間になった」とのお声もいただきました。単に「古くなったから新しくする」のではなく、これからの使いやすさと、建物としての安心感を両立させたリフォーム。
伝統を守りながら、時代に寄り添った快適な空間へと生まれ変わった参集殿です。
私たちヤマコーは、これまでに新築店舗・店舗リフォームのご依頼を数多くいただいております。業種は多岐に渡り、焼肉店、居酒屋、マッサージ店、ネットカフェ、歯科医院など、他にも数多くの業種による幅広い実績を持ちます。
私たちが多業種のオーナー様に選ばれ続けている3つの理由
・設計デザインにおいて提案するプランニング力
・オーナー様の想いをカタチにできる現場力
・価値を高める空間アイデア
ヤマコーには大工を経験し、その後、現場監督・設計デザインに携わっているスタッフが在籍しています。建築を知り、建物を知り、デザインを知り、造り方を知り尽くした私たちだからこそ実現できる現場力。現場の進捗をオーナー様と随時確認し、ご要望において「できるかできないか」の回答をその場でお答えすることが可能であり、構造上「できない」と判断した場合は、オーナー様の納得のいくご提案をいたします。その現場力こそが業種という垣根を越えて、私たちヤマコーが選ばれ続けている理由です。店舗リフォーム、新築をお考えの際には是非一度ヤマコーへご相談ください。
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