• 現場レポート

既存建物との調和を大切に。伝統の中に快適性をプラスした拡張工事|京都府某神社増設工事施工事例

神社は地元の人々にとって特別な存在。日々の参拝だけでなく、祭事や地域交流の場としても大切にされてきた場所です。そんな由緒ある神社の敷地内で、高齢者や来訪者の動線をよりスムーズにし、施設としての機能を高めるために、既存の建物に新たな一角を加える増設工事を行いました。工事にあたっては、「神社建築らしさを崩さず、しっかり調和させること」が最大のテーマ。外観や素材の選定には細心の注意を払いながらも、断熱性・耐久性など、現代の快適性や性能も取り入れた設計が求められました。見た目の美しさだけでなく、内部構造や細部に至るまで丁寧に仕上げることで、長く愛される建物として完成を目指しました。今回は、基礎づくりから外装仕上げまでの全工程を、ご紹介します。ぜひご覧ください。

現状

増設前の現場は、かつて給湯設備などの配管が集まっていた屋外スペース。木製の外壁は風雨にさらされて経年劣化が進み、表面にはコケや汚れが目立つ状態でした。地面はコンクリート敷きではあるものの、一部ブロックで仮置きされた箇所もあり、湿気や通気性への不安が感じられる状況でした。また、配管類が露出しており、機能的には役目を果たしていたものの、見た目や安全面では改善が必要とされていました。これらを一度リセットし、構造的に安定し、美観も整った空間に生まれ変わらせることが、今回の工事の第一歩となりました。

壁の解体|壊すことも、未来をつくる一歩。

増設にあたり、まず行ったのが既存壁の解体作業です。解体といっても、ただ壊すだけではありません。取り除く壁と残すべき壁を慎重に見極める必要がありました。特に耐力壁(建物を支える重要な壁)を壊してしまうと、建物全体の強度に大きな影響が出てしまうため、現場では設計図と照合しながら一箇所ずつ確認を行いました。壊して良い部分だけを丁寧に解体し、構造に必要な柱や梁はしっかりと残す。この繊細な作業が、後の安全で快適な空間づくりの土台となります。養生や周囲の安全対策も徹底し、神社という特別な場所での工事にふさわしい丁寧な対応を心がけました。

ブロック基礎設置|新たな空間を支える第一歩。

増設にあたり、まずは土台となるブロック基礎を設置します。地面を整地した後、水平器や水糸を使ってまっすぐ・水平になるよう慎重に配置。今回の現場では、既存建物との取り合い部分もあり、納まりを丁寧に確認しながら施工を進めました。基礎の高さや位置は、最終的な床のレベルにも大きく関わるため、ミリ単位の調整が求められます。作業中は現地で細かく測量しながら、手作業で積み上げていきました。

アンカーボルトの設置|未来の強度は、今この一手で決まる。

ブロックを積んだら、コンクリートやモルタルが固まる前に、アンカーボルトを埋め込みます。これは、のちに木造の土台をしっかり固定するための重要な部材です。風や地震による建物の浮き上がりやズレを防ぐために、適正な間隔と深さで設置。図面と現場を見比べながら、位置を細かく確認しながら作業を進めました。施工精度が後の構造全体に関わる、見えないけれど極めて大切な工程です。

基礎のモルタル仕上げ|仕上げで差が出る、見た目と耐久性。

アンカーボルト設置後、ブロックの表面全体にモルタルを塗って美しく仕上げていきます。凹凸をなくし、しっかりと硬化させることで、基礎としての防水性・強度も高まります。また、この後の工事で作業しやすくなるよう、水平面や角の面取りも丁寧に仕上げました。熟練の左官職人の手仕事が活きる場面です。仕上がった基礎は、建物の顔の一部でもあり、細部の丁寧さが全体の品質に直結します。

基礎パッキン設置|湿気を逃して、住まいを守る。

モルタルがしっかり乾いた後、基礎と木の土台の間に「基礎パッキン」を設置します。これは、通気性を確保しながら構造材が湿気で傷むのを防ぐ重要な役割を果たします。特に神社のような建物では、長く使うことを想定して、こうした小さなパーツが耐久性を左右します。今回採用したのは通気タイプの樹脂製基礎パッキンで、施工性もよく、均一な高さで土台を乗せるための調整もスムーズでした。

大工による骨組み加工|一本一本に、想いを込めて。

骨組み設置に先立ち、現場では大工たちが手際よく構造材の加工を進めていきました。設計図に基づき、柱や梁となる木材に必要な刻み(ほぞ穴や仕口)を手作業で施していきます。特に今回の増築工事では、既存建物との取り合いや細かな納まりにも配慮する必要があり、現場に合わせた微調整が欠かせませんでした。写真では、ノミと金づちを使って丁寧に刻みを行う大工の姿が写っています。木材同士がぴたりと組み合うためには、わずかなズレも許されません。精度の高い加工が、その後の骨組み全体の強度や仕上がりに大きく影響するため、一つひとつの作業に集中して取り組みました。こうして現場で加工された部材は、建て方(骨組みの組み立て)作業へとバトンが渡されます。手間を惜しまないこの工程こそが、丈夫で美しい建物をつくるための大切な基盤となっています。

骨組み設置|柱が立つと、空間の輪郭が見えてくる。

いよいよ木造の建て方工程です。土台を敷いた後、柱を建て、梁(はり)や桁(けた)を組み上げていきます。この段階になると、どんな空間ができあがるかが一目でわかるようになり、お施主様からも「広がりが感じられる」とお声をいただきました。耐震性や強度も考慮し、構造金物を要所にしっかりと設置。他の建物との取り合いもあるため、設計図との照合をこまめに行いながら、丁寧に作業を進めました。

床の高さを調整|高さを合わせて、つながる空間に。

増設部分と既存建物の床の高さをしっかり揃えるため、スケールを使って正確な測定を行います。わずかな段差でも、完成後に違和感が出たり、つまずきやすくなるため、この工程はとても重要です。写真のように、床下地に定規を当てて床合板との高低差を確認し、必要に応じて根太や合板の厚みで微調整していきます。バリアフリー性や美観、居住性のすべてを左右する工程で、職人の感覚と技術が活きる部分です。

床組み・床断熱|足元から、快適さを。

床下の断熱性能を高めるため、断熱材(押出法ポリスチレンフォーム)を根太の間にしっかりと敷き詰めていきます。床を組む前のこの工程が、冬の寒さ・夏の暑さを和らげ、快適な室内環境をつくる鍵となります。断熱材の隙間やズレがないよう、切断面をピタリと合わせて施工しました。断熱性能だけでなく、防音や省エネにも効果があります。床合板を敷き込むと、室内の「足触り」も想像しやすくなります。

増築部分の中から見た様子|骨組みの中に、未来を思い描く。

床下断熱材の設置が完了した段階で、中から見た増築部分の様子です。天井・壁ともに構造体があらわになった状態で、これから仕上がっていく様子を想像させます。天井には断熱材もすでに敷き詰められ、夏冬の快適性に向けた準備が整いました。現場では、施工精度を確保するために、断熱材のすき間や浮きを一枚一枚確認。骨組みの整然としたラインが、仕上がりの美しさを物語ります。今はまだ素朴な構造体ですが、この後、内装が施され、建物としての「表情」が生まれていきます。増築とは、単なる広さの追加だけでなく、新たな命を吹き込むプロセスなのだと実感できる瞬間です。

屋根施工|安心の“傘”をかける、屋根構造。

柱・梁が組まれた後は、屋根の下地を組む工程です。垂木(たるき)をかけて、野地板(のじいた)を貼り、全体の勾配や軒の出を確認しながら形を整えていきます。屋根は構造体の中でも特に風や雨の影響を受けやすいため、構造的な強度と見た目の美しさの両立が求められます。既存建物との取り合いにも注意を払いながら、流れを損なわない設計を再現しました。雨仕舞い(あまじまい)まで含めて、技術の問われる部分です。

鼻隠しの塗装|見えにくいけれど、建物の表情を決める場所。

屋根工事に伴い、軒先をぐるりと囲む「鼻隠し」も新たに塗装しました。鼻隠しは、屋根の構造部を守りつつ、外観の印象にも大きな影響を与える重要な部分です。耐久性を高めるために、下地処理をきちんと施した上で、耐候性の高い塗料を採用。色味は、既存建物の深みあるブラウンに自然に溶け込むよう調整し、主張しすぎず、全体を引き締める仕上がりを目指しました。こうした細部への気配りが、建物全体の美しさと長持ちに繋がっていきます。

屋根防水|雨を寄せつけない、屋根の守り手。

野地板を貼ったあとは、防水シート(アスファルトルーフィング)を全面に敷き詰めていきます。これは屋根材を施工する前に必ず行う工程で、雨水の浸入を未然に防ぎ、下地の劣化を防止する重要な役割を果たします。重ねしろや立ち上がり部分に注意しながら、ていねいに施工することで、将来的な雨漏りリスクを最小限に抑えます。こうした見えない部分の積み重ねが、長く安心できる住まいづくりの要です。

サッシ移設|使いやすさと調和の両立

既存のサッシを一度取り外し、新たな配置へ移設しました。取り外したサッシの跡には新たに壁を造作し、外観を自然にまとめました。窓の位置を移すことで、採光・通風が改善されると同時に、内部空間の使い勝手も格段に向上。既存の雰囲気を壊さず、より使いやすい空間づくりが実現しました。

外壁防水|建物を包み込む、安心のバリア。

屋根の防水が終わったら、外壁にも透湿防水シートを張っていきます。屋根と同様に、雨や湿気の侵入を防ぎ、構造材の劣化を防止する役割を持っています。透湿性のある素材を使用することで、室内の湿気は逃がし、外からの雨はしっかりシャットアウト。角や窓まわりの処理には特に気を配り、重ね張りやテープ処理で確実に仕上げました。これで構造体がすべて守られた状態となり、次の外装仕上げへとバトンが渡されます。

外壁貼り|伝統と調和する、木のぬくもり。

外壁仕上げには、神社建築にふさわしい「杉板の鎧張り(よろいばり)」を採用しました。1枚1枚を上下に重ねながら貼っていくことで、雨仕舞いに優れた構造となり、同時に和の趣も引き立ちます。木の表情を活かしつつも、塗装仕上げによって耐久性も確保。既存の外観と色味を合わせることで、増設部分だけが浮かない自然な仕上がりに仕立てました。職人の技術が光る、仕上げの要となる工程です。

外壁塗装|新たな命を吹き込む、色の力。

外壁に杉板を鎧張りした後、全体に塗装を施しました。使用したのは耐候性・防腐性に優れた専用塗料。既存建物と違和感なく馴染むよう、色合わせにも細心の注意を払い、周囲の景観に溶け込む落ち着いた色調に仕上げました。塗装前と比較すると、その差は一目瞭然。塗装によって外壁材の耐久性が大幅に向上し、建物全体に新たな生命感が宿ったような仕上がりとなりました。

完成|既存と調和しながら、新たな一角が誕生。

外壁材を張り終え、塗装も完了した状態です。既存の建物との統一感を大切にしながらも、増設部分だけが浮かないよう細かな色合いや素材感にこだわりました。軒裏や柱の塗装も落ち着いた色合いでまとめ、参拝者の方々にも違和感のない仕上がりに。単なる増築ではなく、歴史ある神社の風景に溶け込む“建築美”としての調和を目指しました。

ヤマコーは人と人、心と心を繋ぎ、お客様の満足を通じて、地域に貢献する企業を目指します。

私たちヤマコーは、これまでに新築店舗・店舗リフォームのご依頼を数多くいただいております。業種は多岐に渡り、焼肉店、居酒屋、マッサージ店、ネットカフェ、歯科医院など、他にも数多くの業種による幅広い実績を持ちます。

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有限会社ヤマコー

取締役 山下 大輔

私は元大工で、大工だった父の一番弟子でした。
父の下で建築やリフォーム、マンションや店舗の改装など、さまざまな現場で経験を積みました。
その経験をもとに、店舗や戸建て住宅の建築やリフォーム、リノベーションも多く手がけております。
お客様に良い家を提供したいという想いをこれからもヤマコーで実践していきます。